懐かしい。これは多分、2011年の1月とかかなあ。
・・・
(父)サンタクロースはいるのかな。
(娘)わからないから教えて!
(父)サンタクロースはパパだとは思わない?
(娘)そうかな、とは思ったけど、やっぱりパパなの?
(父)うん。ある一面ではそうかな。
(娘)そうなんだ。多分そうかな、とは思ってたけど。
(父)ある一面では、だよ。
(娘)ある一面、ってまた、私が嫌いなややこしい変な話?
(父)うん、多分サツキ(当然偽名です)がややこしい変な話だと思ってるやつだよ。嫌いなのはわかるけど、この話はちゃんと聞いてほしいんだ。そうじゃないと、パパがサンタクロース役をした意味がないような気がするんだよ。
(娘)どうせ、「ただ騙してたわけじゃないんだ。」みたいな話でしょ。なんだかごまかしてるみたいで嫌。
(父)うん、そうだけど、サンタクロース役としては、結構苦労もしてきたんだし、少しくらい話させてよ。
(娘)苦労っていったって、どうせおもちゃ屋さんでプレゼントを買ってきただけでしょ? 友達の家は、サンタさんからもプレゼントをもらえて、パパやママからもプレゼントをもらってたんだよ。1個しかくれないなんてケチなんだから!
(父)まあ、1個で済んだってのはあるけど・・・こっちだって、わからないようにプレゼントを隠したり、大変だったんだよ。あんまり高くないものに誘導したり・・・
(娘)ふうん。たいしたことない苦労!
(父)そんなに怒るなよ。今年もちゃんとプレゼントあげるからさあ。いいものあげるよ。
(娘)じゃあ、私が欲しいものなんでもいい?それならまあ、ちょっとくらいなら話しを聞いてもいいけど。
(父)(物でつった気もするけど、まあいいか。)まず、質問だけど、クリスマスにサンタクロースからプレゼントを貰えるって話は、なんだか不思議だと思わない?
(娘)うん。それは不思議だと思ってたけど。タネがわかれば不思議じゃないよ。どの家も、お父さん、お母さんが、こっそり枕元に置いてるんでしょ。
(父)そう、その、どの家も置いてるってのが不思議じゃない?こんなに、大人がみんなで、社会全体で大きな嘘をついてる、っていうことって不思議だなあ、って思うんだ。
 こんなこと、他にないよね。どうして、大人がみんなでサンタクロースなんていうものを創り上げたんだろう。
(娘)面白いからかな。
(父)うん。みんな、子供に、サンタクロースというものを信じさせるのがとっても面白かったんだろうね。実際に、パパも面白かったよ。プレゼントをもらって喜んでるサツキの姿は可愛かったなあ。
 あと、なんといっても、いい子じゃないとプレゼントが貰えないっていうのがいいよね。親がプレゼントをあげないって脅すと、なんだかひどい親みたいだけど、サンタクロースならしょうがないもんね。
 そんな、教育上の効果とかもあって、多分、現代のお父さん、お母さんの希望にぴったりと一致したんだろうね。そして、すごい勢いで社会全体に広がっていったんだろうね。
(娘)まあ、サンタクロースを大人がみんなで創り上げたっていう話は面白いけど、そういうことって他にもあって、例えばバレンタインデーのチョコレートとかと一緒だと思うけど。
(父)うん。そうだね。そこまではそうだと思う。だけど、サンタクロースにはもっと不思議なことがあると思うんだ。
 ここからは多分、君がお母さんにならないとわからないのかもしれないけど、自分がお母さんとして子供にクリスマスプレゼントをあげるときに思い出して欲しいと思って話すね。
(娘)忘れちゃうと思うけど。
(父)(だから、文章にしてるんだよ・・・)
まあ、忘れちゃってもいいから聞いて。
 パパがクリスマスの夜、君の枕元にプレゼントを置くとき、自分が置いた気がしなかったんだ。なんていうのかな、自分は、自分の意思でプレゼントを置いているんじゃなく、自分は、なんだか、プレゼントを置く役割を演じているだけ、っていう気がしたんだよ。
(娘)それは、大人がみんなでサンタクロースを作り上げたから、自分の考えじゃなくて世の中の流れでなんとなくプレゼントを置かされていたっていうこと?
(父)う?ん。そういう面はあると思う。だけど、それだけじゃないんだよな。
もっと、正確にいうと、パパが子供の頃、子供だったパパの枕元にプレゼントを置いてくれた人と同じ人が置いている気がしたんだよ。パパはその手伝いをしてるだけっていう感じだったんだ。
(娘)パパの枕元にプレゼントを置いた人ってジジかババ?
(父)うん。まあ、そうなんだけど、そういうことじゃないんだよな。
 子供だったパパの枕元にプレゼントを置いたサンタクロースが、サツキの枕元にもプレゼントを置いた感じがしたとしか言えない。
 だから、サツキが12月25日の朝に起きて、プレゼントを見つけて喜んでいるのを見て、「ああ、俺が置いたのに、サンタさんからのプレゼントだと思うなんてかわいいなあ」なんて全然思わなかった。
 本当に、サンタさんからプレゼントを貰えてよかったなあ、ってしか思わなかったんだよ。不思議じゃない?
(娘)う?ん。不思議だけど、わかんないかなあ。やっぱり。
(父)そうだね。多分、わからないんだろうと思うよ。
 だけど、未来の君のために一応話しておくね。
 パパは、やっぱりサンタクロースはいるんじゃないかと思うんだ。
 いるって言っても、フィンランドにいるとか、そういうことじゃなく、親の心に働きかける何か、という形で、決して子供にはわかることがないような形で、サンタクロースはいるんじゃないかと思うんだ。
 ベタな言い方でいうと、サンタクロースは親の心のなかにいる、っていうのかな。だけど、その言葉じゃ伝わらないんだよな。難しい。
(娘)う?ん、わかんないけど、サンタクロースがいるって、ウソをついていただけじゃないっていうのはわかるかな。
 だって、私も、クリスマスイブの夜には、なんだか、サンタクロースがソリに乗って空を飛んでた気がしたもん。ほんとに、鈴の音が聞こえるような気がしたときもあったし。
 そのとき、本当に私の心のなかにサンタさんはいた、っていう気がするな。
(父)うん。それもパパが話したことと同じことなのかもしれないね。結構サツキもわかってくれるもんだなあ。
(娘)パパの心の中にサンタクロースがいて、私の心の中にもサンタクロースがいるのかもね。
(父)うん。そして、多分、パパからサツキに伝えていく何かの中にもサンタクロースがいるんだろうね。
(娘)ふうん。だけど、パパだって誰かからサンタクロースを伝えられたっていうことでしょ?
(父)うん。パパやママはジジやババからサンタクロースを伝えられて、サツキもサツキの子供に伝えていくんだと思うよ。
(娘)う?ん。だけど、日本には昔はサンタクロースはいなかったんでしょ?ジジやババはどうしたの?
(父)そうだね。そこまでいくと、サンタクロースだけの話じゃなく、伝えていくのは、やさしさとか、そういうものなのかもしれないね。
 たまたま、サンタクロースって呼んでるけど、それはクリスマスの夜の特別のやさしさのことなのかもね。
(娘)うん。サンタクロースがいるっいう嘘は、お前の家は火事だっていう嘘とは全然違うよね。嘘は嘘でも、やさしい嘘だよね。
(父)そうだね。そのやさしさがサンタクロースなのかもしれない。
(娘)うん。納得がいかないところもあるけど、サンタクロースがいるって、からかってた訳じゃないっていうのはわかったかな。
(父)そこをわかってくれるとうれしいな。
(娘)けど、なんだかきれいな感じでまとめたからって、ちゃんと今年のクリスマスもプレゼントももらうんだからね!
 プレゼントをくれるのがパパだってわかったから、遠慮しないで高いもの頼むんだから!
(父)はいはい、わかったよ。早く、彼氏からクリスマスプレゼントもらうようにならないかなあ・・・