入不二基義の「現実性の問題」の感想&考察です。長め(45000字くらいあります)なので5回に分けて掲載しました。PDFは一括です。

0 はじめに

入不二先生の新刊「現実性の問題」を読んだ。

実は、僕はこの本をなかなか読み始めることができなかった。なぜなら、今、僕は自分の哲学的な文章を書くことに集中したいのだけど、この本は読むのに時間がかかると予想がついたし、また、この本が僕に影響を与えるだろうことも予想できたからだ。

今僕が書き進めている文章は入不二先生の哲学に大きく影響を受けているものだ。そのアイディアの根幹が揺るぎ、せっかく書き進めているものを書けなくなるのは避けたい。

とは言え、入不二ファンとしてはいつまでも先送りする訳にもいかないので読み始めてみると、最初は独自の舞台設定に戸惑ったけれど、徐々に入不二ワールドに没入し、テンポよく読み進めることができた。(後半の第7章以降は特に密度が濃かったので、少々ペースが落ちたけれど・・・)

これから、この本を読んで感じたことを書きとめておこうと思う。僕だけでなく誰かの役に立つように。

ただし、これは単なる感想ではなく、独自の考察となってしまうだろう。僕は僕自身の哲学について考えているから、どうしても、僕自身の哲学に引きつけて読んでしまうから。

その考察には入不二哲学を離れた独自の価値があると信じているけれど、入不二先生の哲学自体を味わいたい人にとっては余計な夾雑物となるだろう。だから、この文章は、この本との距離を意識しながら、最初はこの本自体の紹介から、徐々に独自の考察に移るようなかたちで書き進めていきたい。読者の皆さんが読みたいところまで読んでいただければいいように。